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生きがいの見つけ方:意義あるビジネスを創る秘密のソース

2024/10/23

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執筆者:ハビエル・マタ、人材開発と教育設計を専門とするワークショップ・デザイナー兼ファシリテーター。MBAプログラム、企業教育、ベンチャーキャピタルのイニシアティブなどで知られる大手企業のコーポレート部門において、ビジネス・マイクロラーニング・プラットフォームのデジタルコンテンツ開発チームを率いた経験もある。グロースとイノベーションの促進に情熱を燃やし、現実に通用するダイナミックな実践的学習体験にMoonの参加者を巻き込んでいる。ビジネス・イノベーション、デザイン、戦略に関心がある。


あなたは月曜日派?それとも金曜日派?

 

この質問は、私がMBAの勉強をしていたときに、IEビジネススクールのベンチャーラボでマネージングディレクターを務めていたパリス・ド・レトラズ博士に投げかけられたものです。

彼はこう説明しました。月曜日派の人は週の始まりにワクワクしながらベッドから飛び起きるが、金曜日派の人は週末までの日数をカウントダウンしながら過ごす、と。今も心に残っている問いかけです。

私は起業家やイノベーターたちと仕事をするなかで、時間が経つにつれ金曜日派から月曜日派へと変わっていきました。何がその違いを生んだのでしょうか? それは「生きがい」でした。

つまり「存在意義」という概念です。MBAの授業では、生きがいを見つけるためのフレームワークに多くの時間を割きました。私は、その過程で自分の使命が、日本や世界の起業家のために影響力のある学習体験を設計することにあるのだと気づきました。

アーリーステージの起業家にとって、“生きがいの見つけ方” は単なる個人的な満足感のためのものではなく、解決すべき意義のある問題を見つけるための実践的なツールでもあります。ここでは、生きがいを見つけることがあなたの起業の旅をどのように導き、本当に重要な課題に焦点を合わせる手助けをするかを探っていきましょう。

 

生きがいの文化的起源:単にユニコーンを追い求める以上のもの

日本において生きがいは、一夜にして億万長者になることや、次のユニコーン企業を追い求めることではなく、日々の小さな喜びと社会への貢献とのバランスを見つけることにあります。燃え尽き症候群に効く解毒剤のようなもので、心と魂を込めて努力をし続けるものであり、カフェインや徹夜に頼るようなものではありません。 

西洋では、生きがいはしばしば「唯一の真の目的」を見つけるものとして過大評価されることがあります。まるで魔法のようなキャリアを見つけるための宝探しのようです。しかし、生きがいはそれほど劇的なものではありません。日本のアプローチはもっと現実的で、喜び、目的、責任を徐々に統合していくものです。この考え方を理解することで、とくに完璧なビジネスを構築しなければならないというプレッシャーを感じている起業家にとって生きがいはより身近なものとなります。もう一つ真実を言えば、完璧なんてものはなく、あるのは進歩だけなのです。

 

ケーススタディ: 生きがいを体現した起業家たち

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A photo of Yvon Chouinard by Tom Frost

イヴォン・シュイナード パタゴニア創業者 ― 情熱と利益の交差点

イヴォン・シュイナードは、金儲けを目標にパタゴニアを始めたわけではありません。彼はただ、壊れない登山用品を作りたかっただけでした。彼の自然に対する愛と、高品質なアウトドアプロダクトを作る才能が彼自身を導いたのです。利益はその後についてきたものでした。

彼が自身の価値観に忠実であり続けた結果として、パタゴニアはサステナブルビジネスの先駆者となり、単にブランドを築いただけではなく、消費者主義の在り方を変革しました。パタゴニアのキャンペーン広告「Don't Buy This Jacket(このジャケットを買わないで)」は、商品を押し売りするものではなく、目的と環境保護活動に基づいた心構えを広めるものでした。情熱、利益、社会的影響が交差する場所を見つけることで、シュイナードは生きがいを体現し、ゲームチェンジャーとなったのです。

 

星野佳路 星野リゾートCEO ― 伝統と革新の融合

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A photo of Yoshiharu Hoshino

星野氏は単に家業を引き継いだわけではなく、非常に競争の激しい市場でそのビジネスを変革しました。海外のホテルチェーンが日本に進出し、外資によってホスピタリティ業界が再編成されていくなかで、日本の文化を守りつつ、これらの国際ブランドと競争するという課題に直面しました。

結果的には、家族で百年経営してきた歴史ある温泉リゾートを外国モデルに従って変えてしまうのではなく、日本の豊かな伝統を強調することで世界的に認められるラグジュアリーブランドへと進化させることに成功しました。 

そのアプローチは、変化に逆らうのではなく、伝統の中に革新的な要素を取り入れるものでした。日本の伝統文化を忘れずに、現代の旅行者のニーズも取り入れ、単に生き残っただけでなく発展することに成功したのです。それは、情熱、技術、目的が一致し、激しい競争にもかかわらず、意味があり持続可能なものを創り出そうと奮闘した、生きがいの体現と言えるでしょう。

 

生きがいを使ってスタートアップに最適な問題を見つける

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Image of finding the IKIGAI by Eugenio Hansen, OFS

生きがいは個人的な満足感にとどまらず、解決する価値のあるビジネス課題を見つけるためのロードマップになります。4つの主要要素(情熱、職業、使命、天職)を掘り下げていくことで、あなた自身と共鳴する、市場でも実現可能な課題を見つけることができます。

1. あなたが愛するもの(情熱)

情熱は、物事が困難になった時にあなたを支えてくれるものです。困難は必ず訪れます。問題に対してどれだけ強い思いを持っているかが、モチベーションを保つ鍵となります。 

自分が情熱を感じる産業、原因、または課題のリストを作成しましょう。例えば、テクノロジーに興味があるなら、AIやプライバシー、デジタル倫理に関連する課題に取り組みます。持続可能性に関心があるなら、再生可能エネルギーや廃棄物管理のギャップを検討することもできます。毎日取り組むのが楽しみになる課題に集中しましょう。そうでなければ、困難に直面した時にすぐに別のものに心移りしてしまうかもしれません。

2. あなたが得意なこと(職業)

問題を解決するには情熱だけでなく専門知識やスキルが必要です。あなたにある他者には真似できない核となる能力をマップします。データの専門家なら、分析や財務の分野にチャンスがあるかもしれません。デザイナーなら、ユーザビリティやイノベーションに関連する問題解決を考えることができます。スキルにマッチした問題を見つけられれば、アイデアだけでなく、実際に実行可能な解決策を提供できます。

3. 世界が必要としているもの(使命)

大きな問題とは、世界がその解決策を求めているものと言えます。情熱とスキルがあっても、その問題が適切でなければ、どこにも辿りつけません。潜在的なユーザーに話を聞き、彼らの最大の不満を明らかにしましょう。彼らはどんなギャップを感じているのでしょうか?もしユーザーが「はい、それを直して欲しいんです」と言ったのであれば、あなたは正しい道を歩んでいると言えるでしょう。明確な変革要求のある問題に焦点を当てましょう。緊急性が高ければ高いほど、ソリューションが成功する可能性は高くなります。

4. 報酬を得られるもの(天職)

最後に、誰もあなたのソリューションにお金を払う気がないのであれば、それはビジネスではなく趣味です。収益化への明確な道が必要です。顧客はそのソリューションに喜んでお金を払うかどうか市場を調べましょう。ニーズは高まっているでしょうか。サブスクリプションであれ、1回限りの購入であれ、サービスであれ、収益を上げる必要があります。自分のスキルや情熱に共鳴するだけでなく、収益への道筋が明確な問題に焦点を当てましょう。

 

結論 生きがいを使って正しい問題を見つける

生きがいフレームワークは、個人的な充実感を得るためだけのツールではなく、実際の市場需要がある、有意義で解決可能な問題を見つけるための戦略的手法です。自分の仕事と目的を一致させることで、浮き沈みを乗り越え、本当に重要なことに対して地に足をつけて取り組むことができます。

さっそく始めましょう。世界が、次の革新的なビジネスアイデアが、あなたの「生きがい」を待っているはずです。


Moon Creative Labでは、スタートアップを支援するためのプログラムを複数提供しています。ご自身のビジネスアイデアと成長に変革をもたらしたい方はぜひ参加をご検討ください。詳しくはウェブサイトのトップページから。

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