2日間でビジネスアイデアを具体化するMoon Open Workshops参加者の体験を紹介。事業開発の壁を乗り越える具体的な体験と学びをシェアします。
Moon Open Workshopsは、表参道にあるMoon Creative Lab東京スタジオで開催される2日間のワークショッププログラムです。三井物産グループ、パートナー企業、そして個人起業家が集い、多様な視点からフィードバックを受け、アイデアを実現性の高いビジネスコンセプトへと磨き上げます。
参加者は自身の掲げたビジネス課題に対する解決策を、人間中心のアプローチでデザインし、様々なフレームワークやツールを用いて、2日間で具体的なコンセプトへと落とし込んでいきます。
私は、三井物産の社内プロジェクトで0→1の事業開発を経験したことがあり、もっとベンチャー的なアプローチの技術とメンタリティを深く学び、自身の事業開発手法の引き出しを増やしたいと強く思っていました。また、個人的な課題意識も抱えており、それが参加条件に合致したことも後押しとなりました。
これまで私は、消費者に近い生活産業領域での事業投資や事業立ち上げを中心にキャリアを重ねてきました。しかし、ある程度確立された「型」によって、事業価値を評価したり、成功を複製・拡大することがほとんどでした。
転機となったのは、2025年3月までの1年半、社内プロジェクトで携わった事業創出の経験です。課題を特定し、仮説を立て、実験を繰り返しながら市場への参入を模索する日々。誰も足を踏み入れたことのない新しい事業を創り出す過程では、過去の成功パターンは通用しません。時間をかけて完璧な計画を練るよりも、まず解決したい課題という最終地点を見定め、仮説を立ててそこに向かって数多くの行動を起こし、スピーディーに進める道とそうでない道を見極める精度を高めながら、自ら道を切り拓いていく重要性を痛感しました。
この経験こそが、私がベンチャー的アプローチ、つまり「Fail fast, fail cheap(早く安く失敗しろ)」の精神に触れ、トライ&エラーを通して事業を形作る手法を体得する貴重な機会となったのです。
現代において、自ら課題を設定し、それを解決するためにテクノロジーやリソースを組み合わせて事業を構築する能力は、ますます不可欠になっています。とくに、テクノロジーと経営資源が豊富な大企業にとって、このベンチャー的アプローチはまさに「鬼に金棒」だと感じています。
Moonのワークショップは私にとって、このベンチャー的思考のフレームワークとメンタリティを体系的に整理し、自身の経験と理解を再点検する絶好の機会になると期待していました。
2日間、数多くの刺激的な瞬間がありました。とくに印象に残っているのは、国籍も仕事もバックグラウンドも異なる様々な人に、自身のアイデアをプレゼンするロールプレイングを行ったときです。
「すごく共感できます!」
「このサービス、ぜひ欲しいです!もし良ければこんな機能も…」
「アメリカに似たようなサービスがありますよ、これを見てみてください」
参加者から次々と寄せられる共感の声、サービスの必要性を肯定してくれる言葉、そして具体的な参考情報。これらは、私のアイデアが単なる思いつきではないかもしれない、本気で形にする価値があるのかもしれない、と強く背中を押してくれる言葉でした。
もちろん、限られた時間の中で考えを洗練させていく過程では、調べるべきことが山積みになり、何から手をつければ良いのか迷うこともありました。しかし、そんなときにMoonのファシリテーターは親身に相談に乗り、思考を洗練するショートカットのような良い問いかけをしてくれました。
また、同じように課題に没頭して、ひたむきに頑張っているほかの参加者の姿も、私に「頑張らなくては」と勇気を与えてくれました。同じプロセス、同じアプローチで苦しみながらも、前向きに努力する仲間たちとは、不思議なほど強い「同志」のような感情が芽生えたのです。
ベンチャーの世界では横のつながりが強く、助け合いの文化があると聞きます。このワークショップを通して、その一端に触れられた気がします。まさに、「やるべきことは山積みで、考えもなかなかまとまらない…。でも、決して独りじゃない。常に誰かが見守り、声をかけ、支えてくれる」。そんな心強さを感じた2日間でした。
最大の学びは「不確実性を恐れず、目の前の課題に果敢にチャレンジする」という姿勢です。
医学やAIなど、科学技術が日進月歩で進化する現代においても、私たちの周りには未だ多くの人々が不満や不便といった「課題」を抱えて生活しています。それらの課題の多くは、目に見えない形で存在し、可視化も定量化もされていません。しかし、当事者やその課題を深く経験した者だからこそ気づける、切実なニーズがあることは確かです。
人は突然、重い病気や親の介護などの深刻な人生課題に直面することがあります。初めてのことで何をどうすればよいか分からず、膨大な時間と労力をかけて手探りで情報を集めなければなりません。
私は、信頼できる情報(形式知)や経験者の声(暗黙知)を整理し、誰でもすぐにアクセス・比較できる形で提供することで、必要な対応策に早くたどり着けるようなサービスを立ち上げたいと思っています。そうすることでどんな人生課題に直面した時もリカバリーできる未来を目指しています。弱気になっている私たちを受けいれ、再び元気に出発する準備を整えるシェルターのような存在になればと願っています。
これからは、自身の経験から得た小さなヒントを手がかりに、そうした見過ごされがちな課題の可視化と定量化に取り組み、普遍的なソリューションを開発することで、社会の進歩に貢献していきたい。そう強く思うようになりました。
新しい挑戦には、不確実性と不安がつきものです。一歩を踏み出すことに躊躇するのは、ごく自然なことです。もしあなたが今、何か新しいことへの挑戦をためらっているのであれば、一度こう自問してみてください。
「踏み出さないことで失うもの」と「踏み出して、もし失敗した時に失うもの」。どちらが大きいだろうか?と。
私自身、自問自答することで、漠然とした不安が具体的なイメージへと変わり、進むべき道が見えてくることがあります。もし、「踏み出さないでいる方が、新しい経験や可能性をより多く失うことになる」と感じたのであれば、あなたの心は自然に「踏み出したい」方向へと傾いていくはずです。
心の奥底から湧き上がる「やってみたい」という気持ちを無視できないのなら、勇気を出して一歩踏み出してみてください。案外、そこには想像以上の収穫が待っているものです。そして、その一歩を踏み出した後のことは、未来の自分に任せましょう。
明日の私は、きっと今の私を裏切らない。うまく仕上げてくれると信じています。
あなたもMoon Open Workshopsに参加しませんか?
プログラムの詳細はこちらから!
https://www.mooncreativelab.com/ja/openworkshops
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