知識不足に言語の壁...先輩の一言から得た失敗を恐れないマインドセット|Stretching your comfort zone

2023/03/01

ビジネスインキュベーションをサポートするMoon Creative Labで日英通訳に携わるクルミ・カノネオが、新しいビジネスアイデアを発掘するイベントシリーズ「ILLUMINATE」の参加者から得た学びをシェアします。


学び

  • 「Stretch our comfort zone」一歩踏みだす勇気が新しいチャンスを生む

My project.jpg2022年8月、Moon Creative Lab(以下 Moon)が主催するビジネス創出のためのイベントシリーズ「ILLUMINATE」のイベントが、表参道にあるMoon東京スタジオで開催されました。

このときのイベントは、未来の起業家にMoonのインキュベーションプロセスを直接体験し交流してもらうことを目的とした「Make-a-thon(メイクとマラソンを掛け合わせた造語、メイカソン)」でした。グループセッションを通じて、各自が思い描いたアイデアをより可能性を感じられるビジネス構想へと発展させ、既存の組織や事業部の拡大チャンスを模索するものです。

参加チームは、2日間かけてアイデア出しやその内容の精査、コンセプト作成までのビジネスデザインに取り組み、ショーケースイベントでアイデアとプロトタイプを発表するための準備を行います。 

Moonはデザイン思考を使い、適切な質問を投げかけながら、ビジネスアイデアの具体化を手助けします。そこには反復的に行われる5つのプロセスが存在します。

 

問題の理解
②解決策の創出
③プロトタイプの作成
④プロダクトローンチ
⑤効果検証

 

これらのステップを通じて、チームは仮説検証を繰り返し、アイデアを新しいビジネスへと仕上げていきます。

イベントには、さまざまな国から参加者が集まっていたため、私はMoonのメンバーとして2日間イベントに参加し、日英通訳者としてメンバー間のコミュニケーションをサポートしていました。そこで出会った参加者の一人が、ニュートリション・アグリカルチャー本部から参加していた林 志穂さんでした。

My project.jpg

1日目|議論についていけない……

1日目の昼休み、私は参加者の一人であるさんから相談を受けました。彼女は他のメンバーと比べ、課題となっているテーマに関する経験や知識が少なく、チームのディスカッションについて行けなかったと言います。

 

「業界に対する知識不足に英語力の低さも相まって、グループディスカッションでチームを混乱させてしまいました。明日も貢献できないかもしれません。もう行きたくないとさえ感じています……

 

私は林さんに、大切なのは予備知識だけではないということを説明し、翌日は全力でサポートすると伝えました。

2日目|一歩踏みだせばチャンスを自分でつくれる

2日目、不安や緊張を感じながらも、粘り強く、意欲的に、議論へ参加し続ける林さんの姿を目にしました。1日目とは異なり、わからないことがあれば必ず質問したほか、スピーディーな英語の議論のなかでもタイミングを見計らい、Moonのメンバーに意見を共有してサポートを受けながら、関われる機会を自分から積極的につくっていました。

すると、チーム全体に変化が現れ始めます。林さんが前向きに質問をし続けたことによって、議論の内容に対するメンバー間の相対的な理解が深まり、発言数や質問数がどんどん増えていったのです。結果的に、チームメンバーから林さんに意見を求める機会も増えていきました。

この出来事は、Moonのメンバーが共有しているバリューのひとつ「Stretch your comfort zone」の価値を具体的に表している良い例でした。

自分の貢献度ばかり気にしていた

イベント終了後、林さんは自身の体験についてこう話しました。

 

「自分が周りになにを与えられるのかは重要です。その考え自体は変わりませんが、私は自分がチームにどれくらい貢献できているかばかりに気を取られて考え込んでいたのだと思います。悩みすぎて先輩にメッセージを送り相談したほどです。そのときに『すべての出来事に価値はあるから、今はそのプロセスを楽しんで』とアドバイスを受けハッとしたんです。この場に参加することで自分が得られるものはなんだろう?と。そこではじめて、チームの議論から得られるものはなにか?という大事な視点が抜けていたことに気がつきました。この2日間で失敗に対する認識も少し変わったと思います。以前より怖くなくなりました」

 

林さんの経験は、自らのコンフォートゾーンを広げることは、必ずしも未知の世界に闇雲に飛び込んだり、無理な挑戦を推し進めたりすることではないと教えてくれています。

考え方や視点を少し変えて、小さな一歩を何度でも踏み出すことは、自分自身にチャンスを与えるだけでなく、周りのメンバーがチャレンジしやすい環境をつくることにもつながります。

革新的なアイデアを生むためには、だれもが自由に発言し、質問できる心理的安全性が保たれた環境が必要です。そしてその環境は、自ら生み出してこそ自信につながるものです。経験値の差や言語力の壁を感じながらも、チームに貢献するために挑戦し続けた林さんのストーリーからは、だれもが応用できる重要な学びを得られるのではないでしょうか。


  • 経験値の差は異なる視座をもたらし、議論を活性化させる
  • 「知らない」人の質問や発言がメンバー間の暗黙知を言語化する
  • 与えるだけの人、与えられるだけの人を減らし、アイデアが生まれやすい環境をつくる
  • 発言しやすい環境は自分自身でつくる

文/クルミ・カノネオ

Moon Creative Lab 日英通訳者

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