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社内起業家は起業家精神をどう身につけるのか

2024/12/12

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このブログは、MoonでEIRとして社内起業に取り組む、三井物産シンガポールのSerene Liが執筆。2024年、健康のための持続可能なエクササイズ習慣を創出するためにBoostプログラムへ参加。彼女がMoonで経験した起業家の旅とは?


「ユーザーインタビューを始める前にだれかに指示を仰ぐ必要はある?」

「最も安全な方法はなに?」 

「次のコンセプトデザイン案はMoonの承認を待つべき?」

 

私がMoon Creative Labでスタートアップアイデアについて模索し始めたころは、こうした疑問がよく頭の中に浮かび上がってきました。マインドセットが ”従業員” のままだったことの現れでしょう。三井物産で働いていた頃と違い、上司や先輩が明確な指示や指導をしてくれるようなセーフティネットがないことに不安を感じていました。“従業員” の意識を捨てるのは難しいことでした。アイデアの計画と実行の責任を自分で負うには勇気がいります。慣れるまでには時間がかかりましたが、スタートアップのアイデアを実現できるかどうかを確かめたかったこともあり、必要なことだと感じていました。

起業家は、リサーチ、デザイン、テスト、学習、実践を繰り返しながら、マーケットや顧客、業界のトレンド、進行中の技術革新、利用可能な政府支援などなど、さまざまな要因について理解を深め、事業の方針を検討します。この絶え間ない反復がアイデアを前進させるために必要です。なかでも、私の起業家精神を形成した最も重要な原則のひとつは「デザイン思考」です。デザインするときも、テストするときも、ステークホルダーと繋がるときも、問題提起を念頭に置くことで、関係のないコンセプト創造を防ぐことができます。

 

手段ではなく目的にフォーカスする

健康のための持続可能な運動習慣を誰もが身につけられるよう支援をしたいと起業への挑戦を始めた当初、私はいくつかのアイデアを試しましたが、ユーザー自身の問題への関心を把握することにとても苦労していました。その後、ランニング中のユーザーが使うオーディオプレイリストのキュレーションアプリを試すことになりましたが、プレイリストのコンセプトに夢中になり、問題解決が二の次になっていたことに後になって気づきました。

そのアプリでは、走っている最中に刺激的な音楽をユーザーの心臓の鼓動に合わせて再生したり、その場所に応じた魅力的な情報やランダムな娯楽コンテンツを表示させようとしていました。そうすることで、走ることへのモチベーションを持続させようとしました。しかし、それは本当に解決したい問題に必要な手段ではありませんでした。幸い、その後で一歩引いて重要な問題に焦点を当て直すことができましたが、そのときの経験はまさに正しい問題の解決に集中することを思い出させてくれるモーニングコールのようでした。

Boostプログラムに参加して私が学んだことは、オープンマインドで素早く行動することの重要性でした。フィードバックを集めるために、私はMoonメイトやターゲットユーザー、初対面の人との会話を繰り返しました。内向的な私にとってはチャレンジングなことでしたが、シャイな性格を克服してオープンマインドでいることで、思いがけないインサイトやひらめきを得ることができました。

例えば、「どんなアプローチが一番効果的だと思いますか?」「その時々によって違う運動へのモチベーションをどうやって確認しますか?」といった自由形式の質問を投げかけながら、結論を急いだり自分の意見を押し付けることなく、じっくりと話を聞き、フォローアップの質問をすることで、ターゲットユーザーとより強いつながりを築くことができます。ユーザーの個人的な運動経験や、彼らにとって役立つ記事、フィットネスのトレンドについて共有しあうなかで、私とは違うアプローチの競合他社を発見することにもつながりました。こうしたターゲットユーザーからの情報共有は、マーケットへの理解を急速に深め、イノベーションを促進しました。

コンセプト創造のためのブレインストーミングやセレクションを計画し、プロトタイプを開発し、ユーザーテストのフィードバックに学びながらそれらを反復していくプロセスは、Moonメイトのサポートを受けながらとはいえ、そのほとんどを自分ひとりで素早く行うことが要求されます。初期のコンセプトに執着しすぎることなく、柔軟性を保ちながら行動することで、私は最も大切な「ユーザーの問題を解決する」という使命に集中できるようになりました。

 

リスクを成長の機会と捉える

このマインドセットは私に新しい世界を切り拓いてくれました。リスクを避ける人間から、成長の機会として受け入れられる人間に変わることができたと実感しています。だからといって次のスティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグになるという話ではありませんが、こうした気づきは私や身近な人々の仕事や生活をもっとイノベーティブで、もっと刺激的で、もっと共感力のあるものに成長させてくれる、変革的な体験でした。

ひとつ、私からアドバイスがあるとすれば、準備が整うまで待つべきではないということです。成長という不確実性を受け入れることで、自分が想像以上の能力を秘めていることに気づけるはずです!

 

文: Serene Li
EIR at Moon, from Mitsui & Co.(Asia Pacific) Pte. Ltd.

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