Venture Stories

未来の働き方:分散型ヒューマンネットワークについて|メタジョブ!星野尚広インタビュー

2023/03/24

メタバースのアバターを利用し、時間、場所、身体的要因にとらわれない新しい働き方を可能にする「メタジョブ!」の星野 尚広(ほしの・なおひろ)代表にインタビュー。人間を中心に考えた未来の働き方を創造するためのインスピレーションや、これまで行ってきた実験について聞きました。

スクリーンショット 2023-03-24 22.14.48.jpg

――「メタジョブ!」について教えてください。 

星野:「メタジョブ!」は、すべての人々に平等な就職機会、職場環境の提供を目的としたジョブマッチングプラットフォームです。年齢、外見、居住地などが理由で就業機会が見つからない人は数多く存在します。

一方、日本では高齢化が進み、人手不足が深刻化の一途をたどっています。私たちのビジョンは、平等な雇用機会を確保しながら、人々が有意義でやりがいのある仕事を見つける手助けをすると同時に、企業が繁栄するための質の高い従業員の採用を支援することです。

 

――「メタジョブ!」を立ち上げたきっかけは?

星野:私は、東京都東部の自営業者の比率が非常に高い地域で育ちました。子供のころは大学への進学を想像することができませんでした。私が知っていたほとんどの人は、小さな家族経営の事業を継ぐ運命にありました。日本のように学歴を重視する国では、私の生まれ育った環境は不利に働く可能性があります。本当は家業を継ぐことが決まっている人たちも、そうではない人たちと同じだけ可能性を秘めていますが、そのことを証明する機会は限られています。

近年、テクノロジーは物事を急速に変えています。YouTuberはエンターテインメントを民主化し、業界のあり方を変えました。個人同士がオンラインで繋がり商品を売買することが可能になり、それによって生計を立てることもできる時代です。これは仕事のあり方が劇的に、かつ前向きに変化しているということで、私もその前進の手助けをしたいと思っています。

 

――「メタジョブ!」の仕組みについて詳しく教えてください。

星野:メタジョブ!は、バーチャルワーカーとオンラインで顧客対応業務を行う企業をマッチングするプラットフォームです。私たちは、バーチャルで働きたいワーカーと、信頼できる働き手を必要とする企業、質の高いサービスを求めるエンドユーザーの三者すべてのニーズを考慮しています。それらのニーズのバランスを取ることで、関わる人たち全員が摩擦なく価値を交換できるような、人間を中心に考えたプラットフォームの提供を目指しています。

 

――「メタジョブ!」がプロジェクト開始当時から、どのように進化してきたか教えてください。

星野:私のビジョンは変わりませんが、アプローチは進化しました。最初は、働きたいけれど、さまざまな理由で“現実の世界”で働くことができない人々の問題の解決に取り組みました。 3Dアバターを使用してバーチャルのアイデンティティと仕事場を提供することで、彼らを支援することを目指しました。ただ、ワーカーからの反応は良かったものの、企業やエンドユーザーがアバターのみの働き手を常に信頼しているとは限らないこともわかりました。

第2段階でビジネス側に焦点を移すと、問題の核心が社会的信用にあることがわかりました。どうすればバーチャルワーカーの品質を担保しながら、信頼できるネットワークを構築できるのか?そこで、デジタルワーカーの質を評価するシステムを開発・導入しました。その結果、信頼とエンゲージメントの両方を大幅に向上させることに成功しました。このシステムは、企業や政府など、第三者によって干渉されることのない、自律的で透明性のある分散化されたものに設計する必要があります。

現在、メタジョブ!には数千人のデジタルワーカーが在籍していて、月に数百件のジョブマッチングに成功しています。私たちのアクティブユーザーは、主に専業主婦、マイノリティ、非正規社員の方々です。

 

――次のステップは?

星野:私たちがいま現在抱えている最大の課題は、提供できる雇用機会を増やしながら、エンドユーザーの満足度に焦点を当てることです。どうすれば急成長できるのか?ということは、成長中のベンチャーにとってよくある悩みでしょう。計画はあります。

新しい種類のC2C + Bマーケット「Life Sharing」、または「Experience & Earn」というモデルを開拓したいと考えています。メタジョブ!のリサーチ中に、「誰もが何かの専門家である」という魅力的なインサイトに出くわしました。たとえば、私はフランスに数年間住んでいたことがあり、運転が好きでした。結果的に、パリ周辺だけでなく西ヨーロッパも含めた景色のいいドライブルートをよく知る専門家になっていました。フランスや西ヨーロッパでおすすめのドライブ情報やアドバイスが欲しいときには、ぜひ声をかけてください!

メタジョブ!では、ネットワーク内の他のユーザーに人生経験や専門知識を共有できる、収益を上げるためのプラットフォームを提供することで、ユーザーを支援したいと考えています。

たとえば、伊豆半島のすべての温泉を訪れたことがある人は、その経験と知識を共有することによって、その地域への旅行に興味のあるユーザーを手助けできます。エンドユーザー同士で価値を共有することで、メタジョブ!が提供する価値も飛躍的に拡大していきます。そしていつの日か、エンドユーザーがこの方法で生計を立てられるモデルをデザインしたいと思っています。

私たちのビジョンは、平等な雇用機会を確保しながら、人々が有意義でやりがいのある仕事を見つける手助けをすると同時に、企業が繁栄するための質の高い従業員の採用を支援することです。また、エンドユーザーの満足度を重視し、エンドユーザーに真の価値を提供するプラットフォームでありたいと考えています。

短期的には、C2C+Bモデルの構築に取り組んでおり、これがプラットフォームの主要な成長分野になると考えています。また、スコアリングシステムにもさらに磨きをかけ、可能な限り客観的で信頼できるものにしたいと考えています。

 

――未来の仕事のあり方について、どのように想像していますか?

星野:私たちは、未来の働き方はこれまで以上に分散化され、人間中心であり、ハイブリッドでフレキシブルなものになると考えています。

テクノロジーの進歩によってリモートワークが容易になり、仕事とプライベートのより良いバランスを求める人が増えています。とくにここ日本では、より多くの人が個人事業主になることを求めるようになっています。少なくとも部分的にはそうでしょう。今ほど、他者に直接、ピアツーピアで直接的に価値を提供するビジネスを始めることが容易な時代はありません。メタジョブ!は、こうした時代のシフトを可能にする手助けをしています。

メタジョブ!は、長期的にはよりダイナミックで公平な労働環境を目指す、大きなムーブメントの一部であると考えています。私たちは、仕事に合わせた生活ではなく、生活に合わせた仕事を見つけることを支援し、誰もがバックグラウンドや状況に関係なく、自分の貴重な人生経験をほかの誰かと共有することで生計を立てられる世界をつくりたいと考えています。これが未来の働き方だと信じていますし、その一部になれることに興奮しています!

 

※「メタジョブ!」の最新情報は、公式ウェブサイトで確認できるほか、「Moon Stories Blog」でも随時お知らせしていきます。

Share on

Related stories

Moonでインキュベート中のスタートアップにスポットを当てるイベント「Founder Focus」をPAスタジオで開催。

Read More

Moon Creative Labは、三井物産の人事総務部と共同で、三井物産の2024年度MVV+D&I月間(ミッション・ビジョン・バリュー・ダイバーシティ&インクルージョン)に取り組みました。

Read More

News

三井物産グループのベンチャースタジオMoon Creative Labがビジネスデザイン構築をサポートする教育プログラムSparkを8/28〜9/3日に開催新規ビジネス創出に取り組むベンチャースタジオ、Moon Creative Labでは、2024年8月28日(水)〜9月3日(火)の5日間にわたって、Human-Centered(人間中心)の革新的なビジネスデザイン基盤を習得するための教育プログ…

三井物産グループのベンチャースタジオMoon Creative Labがベンチャーの事業成長を加速するBoostプログラム第3期募集を開始新規ビジネス創出に取り組むベンチャースタジオ、Moon Creative Labでは、Human-Centered(人間中心)なアプローチを通じてアーリーステージのスタートアップビジネスにおけるトラクション獲得を目指す3か月間の事業成長支援プログラム「Boost…