このブログの執筆者: Subaru(Ting Yan Wong)。Moon Creative Labのデザインリード。プロダクトデザインとリサーチを通じてインパクトあるソリューションを生み出すことに情熱を注ぐ。eコマースやロジスティクス、ヘルスケアの分野で、ビジュアル、プロダクト、ブランディングに携わりながら、イノベーションに注力し、生活をより豊かにするためのデザインを追求。デザイン、プロダクト・イノベーション、ビジネス戦略とクリエイティブ・ソリューションの連携に関心がある。
私たちは今、AIの時代に生きています。毎日のように新しいAIモデルが登場し、進化を続けています。この数年間、AIの進化が仕事に与える影響について、期待と不安が語られてきました。デザイナーはこの議論の中心にいる存在の一つです。
Photoshopが画像を生成し、FigmaのAIがプロンプト一つでUIレイアウトを提案するようになり、「デザイナーの活躍する場は本当に残っているのか?」と疑問を抱く人もいます。答えはもちろんイエスです。
AIはデザイナーを代替するのではなく、その役割を進化させ、より強化するものです。デザイナーに求められるのは、創造的思考、戦略的思考、問題解決力です。AIを脅威と見るのではなく、これまでのデザインの進化の一部として捉え、どう活用するかが鍵となります。
では、デザイナーの役割がどのように変化してきたのか、そしてAI時代においてどのような未来が待っているのかを見ていきましょう。
デザイナーの長期的な価値やキャリアの持続可能性を考える前に、まず「デザイナーとは何か?」を理解する必要があります。ChatGPTに問いかけると、こんな答えが返ってきます。
「デザイナーとは、アイデア、プロダクト、体験を創造し、形にすることで、問題を解決したり、メッセージを伝えたり、機能性や美しさを向上させたりする人… デザイナーは、創造力、問題解決能力、技術的スキルを組み合わせ、視覚的に魅力的で機能的、そして意味のあるものを生み出す存在である」
デザイナーの役割は決して固定されたものではなく、つねに進化し続けるものです。テクノロジーやビジネスニーズ、ユーザーからの期待の変化に伴い変化してきました。そして今、AIがこの変化を加速させています。
かつてデザイナーは、グラフィックデザイン、ファッションデザイン、インテリアデザイン、プロダクトデザインなど、それぞれの分野で専門性を高めていました。アナログな手作業から、PhotoshopやIllustratorといったデジタルツールへと移行し、デザインワークフローが劇的に変化したのが最初の大きな転換点でした。
その後、ビジネスがデジタル化するにつれ、デザイナーの役割はさらに広がりました。UIデザインが登場し、デザイナーは開発者やマーケターとより密接に連携するようになりました。単なるビジュアルデザインにとどまらず、ブランドストーリーテリングやユーザーとの感情的なつながり、ウェブ・SNS・モバイルを横断した一貫性のある体験設計へと領域を広げていきました。
そして、モバイルアプリやSaaSプラットフォームが爆発的に普及したことで、デザインはさらに進化を遂げました。UX/UIデザインが標準化され、デザイナーは見た目を作るだけでなく、ユーザー体験のデザイン、リサーチ、ユーザビリティテスト、データを活用した意思決定に重点を置くようになりました。また、アジャイル開発の導入により、デザイナーはクロスファンクショナルチームの重要なメンバーとして役割を担うようになりました。
そして今、第5次産業革命の時代に突入し、人とAIが協働することが前提となる中で、デザイナーの役割はさらに進化し続けています。単にプロダクトをデザインするのではなく、デザインシステムやサービスのデザイン、オムニチャネル体験の構築など、より広範なシステムデザインに携わるようになりました。AIはこの流れを加速させ、デザイナーに問題定義、倫理的な視点、人間とAIの協働といった新たな責任をもたらしています。デザイナーの役割は、静的なプロダクトを作ることから、動的で知的な体験をデザインすることへと移行しているのです。
AI時代において、デザイナーはどのように価値を発揮し、自らの役割を築いていけばいいのでしょうか?答えは、変化を受け入れることにあるでしょう。
デザイナーはこれまでも常に進化してきました。手作業からデジタルツールへ、ビジュアルデザインからユーザー体験へ。AI時代においても、デザイナーの役割は単なる実務者ではなく、キュレーター、ストラテジスト、ファシリテーターへと進化しています。
AIを活用しながら、創造力を生かし、戦略的思考によって意義のあるイノベーションを推進して、人間中心のアプローチで課題を解決することが求められています。
AIが単純作業を効率化し、アイデアの実現スピードを加速させることで、デザイナーにはより重要な問題に集中するチャンスが生まれます。今こそ、ユーザー体験の設計、人間中心設計、戦略的思考に力を注ぐべきタイミングです。また、デザインの枠を超え、ビジネス戦略、マーケティング、システム思考といった領域へと専門性を広げる絶好の機会でもあります。
AIは敵ではなく強力な味方です。デザイナーに求められるのは、特定のツールや技術を極めることではなく、創造と、戦略と、問題解決について考え続けることです。過去にも変化を受け入れ、進化を遂げてきたように、これからもデザイナーは新しい未来を再定義しながら創り続けていくことでしょう。
本当に大切なのは「どんな未来をデザインしたいのか?」という問いなのではないでしょうか。
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