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Lullabyが語る「育児・仕事・家事」両立のヒント|三井物産社内イベントレポート

2023/08/07

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2023年6月30日、三井物産のオフィス環境を改善する専門組織「Work-X室」が開催した社内交流イベントに、夜泣き改善アプリ「Lullaby」代表の田子友加里と、アプリ監修医である森田麻里子先生が登壇しました。会場には、40名を超える三井物産社員が部署をまたいで集まり、子供の年齢が近い社員同士でテーブルを囲みディスカッションを行うなど、交流を深めました。

イベントでは、田子と森田先生が、それぞれの育児・仕事・家事の両立に関する自身の経験を紹介。社員から事前に集めた質問に回答しながら、保育者が抱えるさまざまな悩みに対して、科学的根拠や実体験をもとにしたヒント、解決策を数多く共有しました。ここでは、その一部を紹介します。

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田子友加里:アメリカで出産を経験した1児の母。三井物産からMoon Creative Labに出向し、Lullabyを起業。育児中夜泣きに悩んだが、アメリカで知ったスリープトレーニングを実践し、劇的な改善を経験した。EdTech業界でのスタートアップ投資経験なども活かし、夜泣き改善のアイデアを事業化した。
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森田麻里子先生:Lullabyアプリの監修医。3児の母。麻酔医として働いていたが、第1子出産児に夜泣きに直面し、小児睡眠の研究を開始。現在は睡眠医療医としてカウンセリングを行うほか、スリープコンサルタントの養成、小児睡眠に関する書籍出版など、さまざまな活動を行っている。

目次

  1. Lullaby「99%のねんね改善率」の根拠
  2. 育児・仕事・家事を両立するヒント(Q&A)

 

1.Lullaby「99%のねんね改善率」の根拠

田子:私がLullabyの業績で一番誇りに思っているのは「99%のねんね改善率」です。アプリには、ユーザーがサービスを評価する機能があり、現在2300件ほどの有料のねんね相談を提供しているなかで、受けた方々の99%が良かったと評価してくださっています。コメントも残っており、その結果をとても誇りに思っています。今日は、その夜泣き改善の根拠について、監修医の森田先生からお話をいただきたいと思います。

 

森田先生:寝かしつけに関する悩みはとても大きなものです。日本の保護者のお悩み第1位です。悩んでる方は自分も寝られないため、非常に強い悩みを感じています。一方、日本の子供たちの睡眠はどうなっているか。2018年に発行された愛媛大学のデータによれば、0〜3歳児の総睡眠時間の長さを主要17か国で比べると、日本は最下位です(*1)。

2016年のOECDのデータを見ますと、成人の男性と女性の睡眠に関しても、当時のOECD加盟国に、中国、インド、南アフリカを加えた38か国中でほぼ最下位。女性は最下位でした(*2)。日本の睡眠への意識の低さをよく表していると感じます。

これを要因として、仕事の復帰への不安を感じたり、子供が寝なくてイライラして喧嘩して夫婦仲が悪くなり離婚してしまったり、産後クライシスや産後うつのような状態になる方も多くいます。この夜泣き問題をどう改善するかという方法論が、日本ではまったく確立されていません。

私がこの「99%のねんね改善率」に自信を持っている理由は、エビデンスがあるからなんです。ねんねトレーニングに関する論文をまとめて解析した調査では、52の論文のうち94%は夜泣き改善に果があると結論づけているほか、平均で8割以上の子供に夜泣き改善の効果があったと結果が出ていました(*3)。結果がしっかり出ているのに、日本では全然広まっていません。医療機関や助産院などに行っても指導してもらえません。これは問題だと思うんですね。

大人の睡眠不足に影響する要因としては、もちろん子供が寝ないということだけでなく、家族の帰りを待って一緒にご飯を食べたりすることなども影響があります。とはいえ、子育て期のなかでもっとも大変な乳幼児期の、子どもの睡眠トラブルの影響はやっぱり大きいんです。

寝かしつけに1-2時間かかるとか、夜中でも1-2時間ごとに起きて授乳をするとか、早朝4時とか5時に子供が起きて、つきあう親がフラフラみたいなことってよくありますよね。これを解決しないと、なかなか睡眠時間は伸びません。

新型コロナウイルス感染症が流行した影響で、もともと15%ほどと言われていた産後うつの割合が、約30%に増加したという研究結果もあり(*4)ますが、睡眠不足はメンタルヘルスへの影響も大いにあります。当然のことです。眠れなかったらイライラするし、メンタルヘルスも崩れます。そして、その原因の一つが赤ちゃんの睡眠に関する問題ということなのです。

夜泣き寝かしつけを改善することにLullabyとしてチャレンジして、ママやパパになっても選択肢を制限されない社会を目指したいと思います。

 

>Lullabyの公式ホームページはこちら

 

2.育児・仕事・家事を両立するヒント(Q&A)

森田先生:Q&Aのための事前アンケートでは、お昼寝、パワーナップのことなど、ご自身の睡眠について悩んでいる方が多くいらっしゃいました。あとはお子さんの睡眠、家庭と仕事の両立に関するご質問も多くありました。

私自身がどうしているかをお答えしますと、まず「Lullaby」を利用して子供を寝かせています。ここは笑うところです(笑)。

ただ、子供を寝かせることや、睡眠時間を取ることは、仕事と家庭の両立をするためにとても大事なことだと思います。

Q:子供が授乳に執着しているとき、どうすればいい?

森田先生:2歳7か月のお子さんがいらっしゃる方からのご質問に「授乳に執着がある」という声がありました。これについては夜間断乳をするのもありだと思います。夜だけでも寝たいときには、夜間断乳で日中だけ授乳するのは問題ありません。

ただ、2歳7か月だと子供はかなり抵抗すると思います。そこは覚悟が必要ですが、基本的には1〜2週間で慣れることが多いと思います。なので、日中もやめてしまうのではなくて、まず夜間は飲まないよ、と子供に伝えた方が良いのかなと思いました。

Q:効果的なお昼寝(パワーナップ)の取り方は?

森田先生:お昼寝は本当に20分で起きることがとても大事です。これ以上寝てしまうと、深い睡眠に入ってしまい起きにくくなったり、起きた時にぼーっとしたりします。アラームをかけるとか、寝る前にカフェインを摂取することをおすすめします。飲んでから30分くらいで効いてきますので、ちょうどいいと言われています。明るくて眠れない場合は、アイマスクを使っていただいた方がいいと思います。

Q:ワークライフバランスはどう取っている?

森田先生:ワークライフバランスについては、優先順位の問題かなと認識しています。圧倒的に優先順位が低いのは家事です。とにかく家事自体をしないこと、これが大事だと思っています。私は子供が3人いるので、もうご飯はほとんどつくっていません。つくり置きの外注をしています。

第3子を妊娠したときに、つわりでもう無理だと思ってから、毎週決まった方に来ていただき、1週間分つくり置きをしてもらっています。正直なところ7日間フルにはもちませんが、残った1〜2日だけは干物を焼いて、ベビーリーフとごはん、みたいな感じです。

掃除機も週1回ほどしかかけていません。汚いと思われたらごめんなさい。お掃除は週に1回、外部のお掃除の方に頼んでいます。これだけでも精神安定剤になります。

あとは本当に細かいところですが、料理を容器から盛り付けること自体も手間なので、テーブルに保存容器をドンと出して、バイキング形式にしています。好きなものを取っていいよというと子供も喜びます。ワンプレートにしてもいいと思います。教育上は微妙かもしれませんが、お箸置きを使わないとか、かなりずぼらな感じにしています。

仕事に関しては、仕事も育児もどうしてもやりたかったので、子育てを仕事にも活きる時間にしようと思い、こういう仕事を選択したということもあります。

では、次は田子さんからお願いします。

Q:子供の睡眠だけでなく、家庭と仕事の両立の中で自身の睡眠をどう確保すればいい?

田子:私からは、仕事の両立や時間の捻出についてのご質問に回答したいと思います。質問に答える前に、まず私に関する基本的な情報をお伝えします。今、息子は6才です。私の実家は東京で、自宅から自転車で15分のところにあります。夫の実家は静岡です。

基本的には、朝8時半頃に子供を送り、18時半に迎えに行く生活で、勤務時間は9時から18時頃です。週2. 5日は夜に自由時間があります。これは夫と交代制にしていて、お互い週に2. 5日間は毎週必ず自由な時間を夜に持てるようにしています。その時間で、終わらせたい仕事をしたり、人に会ったり、マッサージ・整体・サウナ等でリフレッシュや体調管理をしたり等、とにかく自由に過ごすようにしています。

こうすることで自分のメンタルをメンテナンスし、意識的に自分がハッピーでいられる状態を維持しようとしています。

Q:メンタルはどう保っている?

田子:メンタルのコントロールについては、三井物産からMoon Creative Labに出向してLullabyの起業に取り組むようになってから学んだ一番大きなことだと思っています。B2Cの事業なので、事業へのフィードバックが残酷にも市場から直接数字に表れて返ってきます。常に自分の仕事振りを誰かに評価されている気分になるのですが、だからこそ自分のメンタルを常に自己責任で保つように心掛けています。もちろん上手くいかないときもありますが、メンタルが崩れるとすごく業務効率が落ちると思うんです。

業務に関しては、私以外の大半の方々が業務委託であるララバイの体制上、委託内容やボリュームが明確に決まっており、スピーディーに仕事を進めやすいなと感じています。

Q:自分の時間はどう捻出する?

田子:時間の捻出方法は、外的要因が多いためあまり参考にならないかなと思いましたが、Moonの働き方がフレックス(10時〜14時がコアタイム)で、とても働きやすいと感じています。

事業規模がまだ小さく、大半の決裁権限を自分が持つことができ、上席に確認する項目が少ないため、一つひとつのミーティングで次に何をするか決定していけるところも業務を早く進められる理由の一つだと思います。また、国内事業なので海外出張がなく、大きく時間を取られることもありません。

あとは、ママってスキマ時間がけっこうありますよね。スキマ時間を有効活用するために、便利なアプリやツール等、メンバーと相談しながら少しずつ揃えております。スタッフもほぼ全員ママで、みんなコンサルタントなので、夜の9〜12時になると子供がみんな寝ていて、その時間にみんなで気づいたらLINEで相談していたり、ララバイのことを自然と話し合ったりしています。事業に対する愛情も強いので、24時間ずっと考えていて、そのおかげで早くいろいろと決断できて進められている側面もあるかなと思います。

家では、息子が夜スムーズに9時頃寝てくれているということが大きいです。よく寝ているからか、息子が健康体でいてくれることがなによりです。これまでに保育園、幼稚園、アフタースクールといろいろなところに通いましたが、全部皆勤賞でした。そうするとイレギュラー対応が起きません。急に呼び出されることもありません。すべてが睡眠のおかげではないかもしれませんが、やはり寝ていないと体調を崩しやすいので、関連しているのではと思っております。

あとは移動距離と時間の効率化です。息子を疲れさせないためでもありますが、自転車で15分以内に移動できる範囲内で生活のすべてをまかなえるところに住んでいます。家賃は高くて部屋は狭いのですが、今は日々の移動距離に投資するときだと思っています。

「Life shift : 100年時代の人生戦略」という本をみなさんも御存じかと思います。ここに書かれていることが私の考え方の根源になっているなと感じます。人生は長いので、今何を優先するかというところです。今は貯金があまりできていませんが、長い目で見て1つのステージだと割り切って、家事はできる限りアウトソースして、狭い家に住んででもまずは移動距離と仕事と家族との時間の捻出を優先しています。

最後はほとんど森田先生と一緒です。私もつくり置きサービスを利用させていただいています。そのほかは、宅配サービスを使うことなどは、みなさんと一緒かなと思います。参考になれば嬉しいです。

(この後、参加者同士のフリーディスカッションへ) 


Lullabyアプリは、夜泣き改善のための有料コンサルティングだけでなく、専門家が教えてくれる母乳育児や授乳の役立つ情報「母乳育児・授乳講座」を無料で提供しています。イベントを通じてさまざまな場所で子育てに関する悩みへ回答しており、公式Instagramアカウントで最新情報をまとめて配信していますので、ぜひフォローをお願いします。

 

*1 厚生労働科学研究費補助金:未就学児の睡眠・情報通信機器使用研究班(編).未就学児の 睡眠指針.愛媛:愛媛大学医学部附属病院睡眠医療センター,2018.

*2 Average minutes per day spent sleeping in OECD countries plus China, India and South Africa by gender, as of 2016

*3 Behavioral treatment of bedtime problems and night wakings in infants and young children

*4 コロナ禍で出産・育児を経験した女性の「産後うつ」の割合が倍増|Drastically increased postpartum depression during the COVID-19 pandemic and its association with social restrictions.

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