Moonパロアルトスタジオで、ヘルスケア業界におけるAIの役割に関する講演イベント「AI in Healthcare: Pioneering Precision」が開催されました。
今回登壇者として招待したのは、動脈瘤修復の血管外科手術にAI技術を導入した最初の外科医として知られるアラン・コンウェイ博士です。血管・血管内外科臨床准教授として、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)や、同校と提携する医療機関MarinHealthで活躍。MarinHealthは病院、財団、専門臨床医のネットワークを通じて、健康やウェルネスに関する教育、診断、高度な治療まで幅広いサービスを提供しています。
彼はマイク・ペン(Moon Creative Lab, Chief Creative Officer)との対話で、AIは医療従事者が提供している複雑な処置の正確性をいかに向上させるのかや、AIがどのように医療全体や患者の治療結果の改善に貢献するのかについて見解を述べました。
ヘルスケアにおけるAIの可能性
アラン博士は、医療従事者の業務効率化に関するAIの重要な役割について語りました。ワークフローを最適化し、患者データの記録や文書作成など、医療従事者の仕事の一部である事務作業を減らすことで、医療はより身近になると言います。事務作業の自動化で業務を効率化すれば、医師は患者と対話する時間を増やせます。多くの患者の診察が可能になるほか、患者とのコミュニケーションが改善され、その結果、医療がより広く提供されるように。そうして次第にこれまで十分なサービスが受けられなかった地域にも、医療を届けられると話します。
また、アラン博士は、AIは手術室の業務効率化にも役立つと続けます。AIが手術時間を数十分短縮し、より多くの患者の治療に時間を当てられるようになると話しました。
医療現場におけるAIの現状
MarinHealthでアラン博士が率いるチームは、患者の解剖学的な人体構造を詳細な3Dマップで表現できるAI搭載の手術プラットフォーム「Cydar Maps」を使用しました。視覚化は、手術前の計画、手術中の画像誘導、手術結果の自動評価に役立ち、手術の正確さや手術室での判断力の向上にもつながります。それが結果的に患者の体験すべてのケアにつながります。
医療におけるAI導入の課題
医療へのAI導入はすぐには進みません。アラン博士は、AIの普及が進まないのは財政的なハードルが高いからだと指摘します。ほとんどのAI技術には高額なサブスクリプションコストがかかります。技術を裏付けるデータに確証が得られない段階では、巨額の投資に消極的な医療機関が多いかもしれません。
AI技術が採用されデータが増えるにつれて業界全体への導入は進む、とアラン博士は期待します。高額なコストが継続的にかかるAI技術の財政的なハードルを克服するためには、慈善活動とプロダクトチャンピオン(新製品開発を成功に導く重要なキーマンのこと)が必要で、新技術の強力な信奉者や伝道者たちが慈善活動を重ねることが、医療におけるAI普及の鍵だと語りました。
AIが外科医に取って代わることはない
アラン博士はAIが外科医になることはないと断言し、そうした誤解に正面から取り組んできたと言います。新しいアイデアには誤解がつきもので、AIの能力への過度な期待を和らげる必要があると強調しました。AIの恐怖に焦点を当てるのではなく、医療専門家の仕事を強化・増強することに焦点を当てることが重要で、外科医の代わりになるものではないと述べました。
Moonの焦点
Moonは常に新しいアイデアを歓迎しています。私たちはとくに、ヘルスケアにおけるAI事業に力を入れています。最先端のテクノロジーを活用して、世界中の患者に対して、よりパーソナライズされた、より良い治療結果を提供するにはどうすればよいのでしょうか?AIを活用して、医療専門家の能力を補強し、既存のヘルスケアを変革するにはどうすればよいのでしょうか?アイデアがあれば、ぜひお聞かせください。
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12月3日(火)にMoon東京スタジオで開催されたスタートアップのピッチとネットワーキングのイベント「Boost PITCH & CONNECT」をレポート。