Moon Stories

境界を超えて繋ぐ、革新する、変革する|Moon Creative Labでの挑戦

2025/03/25

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このブログの執筆者:Khairil Azmi。インドネシア出身。アジア・大洋州三井物産株式会社の戦略企画室でマネージャーを務めながら、2021年10月よりMoon Creative Labに兼任で参加。MoonではAPACエリアを中心にビジネスデベロップメントを担当。


Moonでこれまで行ってきた探求は、まさに変革の連続でした。

私はMoonで、活気あるアジア・大洋州地域を担当するプログラムマネージャーとして、人とアイデア、機会をつなぐ業務を担当し、クリエイティブな思想を持つ起業家たちと出会い、スタートアップの立ち上げや成長をサポートしてきました。新しいコラボレーションを発掘し、企業と起業家の架け橋となり、イノベーションプロセスのサポートをしていくどのステップにおいても、実験力、回復力、戦略的ネットワーキングの力が試されてきました。Moonが掲げる「人間中心」の環境下で私は、曖昧さと向き合い、起業家的思考能力を磨くだけでなく、大胆なアイデアと意味のある繋がりが大きな影響力をもたらすという信念をこれまで以上に深めることができました。

ここで紹介するのは、私の視点から見た、イノベーション、コラボレーション、そして個人の成長に関する教訓です。企業とスタートアップエコシステムをつないだ経験、そこで開発されたスキル、起業家マインドを育成するMoonの取り組みへの影響について共有したいと思います。

 

旅のはじまり

2018年、私がインドネシア三井物産で働いていた頃、三井物産がスタートアップ企業との協業や投資の機会を探ることに注力していたこともあり、私はスタートアップエコシステム関連の業務に没頭していました。重要視していた目標の一つは、インドネシアのスタートアップと日本のアクセラレーターのパートナーシップを生み出していくことでした。

私たちはチームを組んで、スタートアップと積極的に関わるためのプラットフォームをつくり、ピッチイベントなどを開催しました。120社以上のスタートアップ、ベンチャーキャピタル、インキュベーター、アクセラレーターと強い関係性を築きながら、インドネシアの活気あるイノベーションエコシステム構築に尽力しました。

当時、私は出会った創業者たちのありのままの情熱、革新的なアイデア、絶え間ない意欲を最前列で見ていた一方で、厳しい現実も見ていました。スタートアップの多くは生き残ることができなかったのです。

三井物産社内にも、創造的なアイデアを持つ優秀な同僚がたくさんいました。しかし、彼らのアイデアは組織の優先課題から切り離されることも多く、未開発のままになっていることが珍しくありませんでした。私は、個人も三井物産も、チャンスを逃しているのではないかと感じていました。

そんな思いとほぼ同時に、三井物産が社内のビジネスアイデアをベンチャー企業として立ち上げるためにMoon Creative Labの設立を発表しました。私はこれこそ最適な解決策だと思いました。そして2021年から実際にMoonへ参加することが決まったのです。

当初Moonは、三井物産社員から生まれたアイデアのみに焦点を当てていました。社内の可能性を解き放ちたいという私の熱意とは完全に一致するものでしたが、私はMoonがいつの日か社外のスタートアップにも門戸を開く日が来るのではないかと夢に見ていました。このビジョンがやがて現実のものとなることを、当時の私は知る由もなかったのですが。

 

Moonで歩んだ道筋

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Moonに参加したことで、私は自らの経験を他者のために生かせるようになりました。私の役割は、創造と成果が行き交うエコシステムに貢献し、それぞれの起業家が掲げる課題の克服や大胆なアイデアの洗練を助け、最終的に実世界へインパクトを与えるスタートアップを構築することでした。

Moonが進化し、外部のスタートアップを巻き込むようになるにつれ、イノベーションエコシステムとの関わりはこれまで以上に大切なものになっていきました。私は、Moonの教育プログラムやインキュベーションプログラム、ワークショップへ多くの参加者を招き、数え切れないほどの参加者が起業の道を歩み始める様子を目の当たりにしました。その結果、さまざまな視点や創造性が混ざり合い、国境を越えた協力関係が結ばれていきました。

同時に、私はアジア・大洋州三井物産戦略企画室でマネージャーの役割も継続していました。企業とスタートアップの世界のバランスを取るには常に適応力が必要です。企業で必要とされる構造化されたプロセスをナビゲートしながら、スタートアップが必要とするイノベーションの、素早く反復的な性質を受け入れる必要がありました。

そのユニークな2つの視点が、企業戦略と起業家的思考の橋渡しを可能にし、意味のある変化を推進するための敏捷性、セクターを超えたコラボレーション、大胆に実行することの価値を強化することに繋がりました。

私は、三井物産のアジア太平洋地域で複数の国を担当する戦略企画担当として、三井物産の社員から生まれたアイデアが長期的な目標に沿うよう取り組んできました。アイデアが学習プログラムからインキュベーションの段階に進む際には、Moonの専門的なサポートを受けながら、三井側の目標に沿う実行可能なスタートアップ手法へと落とし込んでいきました。

このコラボレーションを通じて、私たちはお互いに学び合ってきました。私は、Moonのチームからデザイン思考を具体的に実践する経験を直接得ることができました。そして私自身もMoonのチームに対して、大きな組織がその広範なネットワーク、膨大な事業ポートフォリオ、構造化された意思決定プロセスを活用して、どのように長期的な成長と影響力を推進するのかといった、企業戦略についての理解を促す提案ができたと自負しています。

 

Moonでの挑戦から得た学び

Moonで過ごした日々は、伝統的な企業の枠を超えたスキルを私に与えてくれました:

  • 戦略的ネットワーキング:300社以上のスタートアップ、VC、創業者、インキュベーター、アクセラレーターと関わり、アジア太平洋地域のイベントに参加してコラボレーションを促進することで、新しいビジネスを見出す機会を得ることができました。例えば、「ASEANインド太平洋フォーラム(AIPF)2023」からMoonのインキュベーションプログラムへ多くのスタートアップの参加を促し関係者をつないだ結果、三井物産のネットワーク内でスタートアップのソリューションをテストするパイロットプロジェクトの発足を複数回経験するなど、三井物産のポートフォリオに関する知識を活用し、プログラムの枠を超えた協業の可能性を模索しながら、エンゲージメントを拡大することができました。
     
  • デザイン思考:Moonに参加する前は、顧客が直面する真の問題を十分に理解することなく、創造力とデスクリサーチに頼り、アイデアに飛びつくことがよくありました。Moonで学んだのは、まずペインポイントを特定し、解決策が思い込みではなくニーズに根ざしていることを確認してから、新しいビジネスの創造に着手することです。参加して2年目には、同僚と開発したアイデアのひとつが、このアプローチに従ってMoonのインキュベーションプログラムに選ばれました。私は共同創業者とMoonのチームと協力し、問題定義やリサーチ、インタビューを実施し、ソリューションコンセプトを洗練させ、PoCなどを進めました。原則を適用するだけでなく、チームが顧客のインサイトに基づいてアイデアを洗練するためのワークショップを実施し、様々なエリアの三井物産社員をMoonのプログラムに動員、デザイン思考のプロセスに直接触れる機会を提供してきました。
     
  • 異文化コラボレーション:15か国にまたがるチームとのイニシアチブを管理することで、異なる背景や地域を持つ多様な人々と協力し、新たな視点や解決策を見出すことができました。インドネシア三井物産に在籍していた頃は、他国の同僚との交流はメールで行われることがほとんどで、関わる国も限られていました。Moonでは、ワークショップを含む学習プログラムなどを通じて15もの国々の人々と直接関わる機会を得ることができました。多様な文化的背景、言語、考え方、問題解決のアプローチを持つ人々と直に触れ合うことで、私自身の視野は大きく広がり、異なる考え方への理解が深まり、最終的には個人的にもプロフェッショナルとして成長し、包摂性と受容性を高めることができたと実感しています。

 

Moonでは非常に多くのことを学びましたが、最後に貴重な教訓をひとつ挙げるとすれば、それは「解決策に飛びつく前に問題そのものをよく知ることが重要」ということでしょう。

真のイノベーションとは、単にアイデアを生み出すことではありません。満たされていないニーズを深く理解し、現実世界のインサイトに基づいて反復し、継続的な学習を通じて機会と解決策を特定することです。

大企業であれスタートアップであれ、仮説を立て、課題に挑戦し、利害関係者を巻き込み、体系的にアイデアをテストする能力が、大きな すべての違いを生みだします。デザイン思考、戦略的ネットワーキング、異文化コラボレーションを取り入れることで、私たちはビジョンと実行のギャップを埋め、抽象的なアイデアを実用的で有効なソリューションへと変えることができます。

 

変革は止まらない

また、同じように重要なのは、ここでの旅が、多様な視点で問題解決を後押しする先進的な同僚、創業者、イノベーターたちの素晴らしいネットワークと私を結びつけてくれたことです。ここで築いた人間関係は、私がこのさき新たな機会や協力関係、課題に対してどう取り組むのかを形成する存在であり続けるでしょう。

有意義な変化を生み出す可能性は、常にあなたの手の中にあります。最初の一歩を踏み出して、素晴らしい人々とつながり、旅を続けましょう。

 

文・Khairil Azmi

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