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起業における「問題定義」とは?その重要性と方法を解説

2023/03/08

問題定義はビジネス創出の第一歩目と言えます。三井物産と新しい事業をつくり出すために設立されたベンチャースタジオMoon Creative Labでは、最初に問題定義を多角的に掘り下げることを重視しています。なぜなら、ビジネスインキュベーションのプロセスでは、問題定義ができてはじめて、ビジョンやコンセプトをつくることができるからです。

ここでは、問題定義からユーザーリサーチの準備までのプロセスで意識したいポイントを解説します。

目次

  1. 問題定義に必要な4つのポイント
  2. 「テニスベア」実例
  3. ディスカッションに必要なルール
  4. バイアスチェックの方法
  5. ユーザーリサーチに向けた準備

1.問題定義に必要な4つのポイント

問題定義は、プロジェクトのビジョンやコンセプトを固める前に必要になる最初のステップです。ユーザーが困っていることがなにかや、どんな人が困っているのか、どれくらい多くの人が困っているか、競合は存在するか、といったさまざまな要因を検討する必要があります。

Moonが重要視している4つのポイントを紹介します。

①課題の洗い出し

問題定義をより具体的にするためには、実際に人々がどのような課題に直面しているのかを知る必要があります。下記のような疑問に答えながら問題を洗い出します。

 

  • どのような解決するべきニーズがあるのか
  • 満たされていないニーズはなにか
  • 自覚していないニーズはあるか

 

とくに潜在的なニーズを探ることは、解決策を見出すためにも重要な視点となります。

②問題の規模や深刻さはどれくらいか

統計データなどをもとにして問題を分析することで、その規模や深刻さを調べることができます。調べた結果が解決策を洗い出すためのヒントになります。ただし、データがない場合もあるため、その際はインタビューなどの簡易的なリサーチを行い、具体的にどのような解決策が必要かを考える必要があるでしょう。

③どんな人の役に立てるか

ユーザーエクスプロレーション.jpg

解決策となりうるアイデアを洗い出し、それがどんな人の役に立つのか?を具体的に考えていきます。

ユーザー本人だけでなく関連するステークホルダーを整理し、その関係性をマッピングすることも、ビジネス全体の構造を理解することに繋がります。思い浮かぶ人物像をできるだけ具体的に洗い出し、矢印やはてなでマーキングしながら可視化することが大切です。

④マーケットに入る余地はあるのか

現在のマーケットやユーザーの行動を把握し、彼らが現在どう問題に対処しているのか、そのためにどんな競合サービスがあるのか、既存のサービスで解決できているのか、などを確認し、解決策のアイデアと照らし合わせながら、その問題解決が必要とされているのかどうかを検討していきます。

2.「テニスベア」実例

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Moonのベンチャーポートフォリオの一つ「テニスベア」の例を見てみましょう。テニスベアは、テニスプレーヤー向けに、各地にあるコートの空き状況を横断して検索し予約ができる機能や、自分と同じレベルのプレーヤーを探せる機能を提供しています。

①課題の洗い出し:テニスプレーヤーにとって、テニスコートの空き状況がわかりにくいこと、コートに電話しないとわからない不便さ、自分が強すぎて(弱すぎて)相手に気を遣ってしまうため同じレベルのプレーヤーとプレーしたい欲求、などがサービスに必要な機能の参考になりました。

②問題の規模や深刻さはどれくらいか:テニスプレーヤー人口、コートの数、各問題についてプレーヤーのうち何人が困っているのか、それはテニスが大好きなユーザーにとってどれほど深刻なのか、を洗い出しました。

③どんな人の役に立てるか:小さな頃からテニスを続けているのか、テニスサークル出身なのか、最近始めたばかりなのか、これから始めたいと思っているのか、またはテニスコートオーナーやインストラクターかなどなど、さまざまなユーザー象を設定し、検討しました。

④マーケットに入る余地はあるのか:テニスコートをどうやって見つけるのかに焦点を当て、マップツールや予約機能の有無を調べた結果、各地にあるコートの空き状況を一括検索して予約できるサービスがないことがわかりました。そこで、オンラインでコートを一括検索し予約できる機能を開発。サービス開始後にレベルの近い練習相手が確保できないという課題に対する解決策として、同じレベルのプレーヤーを探せる機能を追加したことが、ユーザーのグロースにつながりました。

3.ディスカッションに必要なルール

ポストイットはる.jpg
ポストイットを使用したブレーンストーミングの様子

アイデアを出していくうえで大切なルールや考え方を2つ紹介します。

質より量

ディスカッションをはじめる前に、アイデア出しがあくまでもスタート地点であることを意識しておきましょう。どんなアイデアもほかの人を触発し、新たなアイデアの種を生むきっかけになります。チームメイトにあいのりしても大丈夫です。だれかの意見を応用して新しい意見を出しても問題ありません。積極的にコラボレーションしていきましょう。

②すぐに評価しない

アイデアに対して「これは間違いない」「こんなものはあり得ない」と評価したい気持ちがあってもグッとこらえましょう。結論を急がずにさまざまな可能性を検討することが大切です。これらを意識したうえで、各ブレーンストーミングを実施しましょう。

基本的な手順を紹介します。

 

  1. 最初は個人で考えアイデアを出す
  2. グループでシェアしてディスカッションを行う
  3. 類似するアイデアのグルーピングを行う
  4. 投票などによって優先順位を決める

 

優先順位は時間をかけて議論して決めることもできますが、時間が限られている場合に多数決は有効です。

以上のルールやアイデア出しのプロセスを経て、問題定義に関するさまざまな要素が可視化されたあとは、バイアスチェックによって思い込みを確認します。

4.バイアスチェックの方法

バイアスチェック.jpg

問題定義に必要な4つのポイントをディスカッションしたあとには、バイアスチェックを行います。自由に意見を出してからバイアスチェックを行うことには、アイデアの萎縮を防ぐメリットがあります。

仮説と疑問とを2つのセクションに分けてブレーンストーミングを行い、仮説はこれまで出たアイデアに関連する事実と思われることなどを洗い出します。次に、その仮説に対して偏見やリスクがないか、思い浮かぶ疑問を洗い出します。

 

  • その仮説は、憶測ではないか?
  • 反証があった場合のリスクはどれほどか?

 

これらの疑問を投げかけることによって可能になるのは、リスクの予測だけではありません。〇〇が証明できたら次の道が開けるのではないか、あの専門家に聞けば〇〇の答えがわかるのではないかなど、次のアクションにつながるヒントを得られます。

こうして細かな点をチームメンバーそれぞれの視点でチェックしていくことで、勘違いが起きるリスクの回避を目指します。

問題定義は、このようにプロジェクトが目指すべきビジョンを明確化するために必要な最初のステップとなります。

5.リサーチに向けた準備

Design research thumbnail.jpg

以上のプロセスによって解決するべき問題が絞られたあとは、これまでのディスカッションで得たさまざまな情報をもとにリサーチの準備をしていきます。

必要になるのは下記2点です。

 

  1. ビジョン(目的や解決策を含む理想像)
  2. ゲームプラン(リサーチの計画、コンセプト設計)

 

ビジョンの明確化は、プロジェクトに関わるメンバーの共通理解を深める役割も担っています。他者にアイデアを伝えるときに必要な要素を盛り込みましょう。下記の質問に答えられる状態を目指します。

 

  • なぜ自分たちがやるべきなのか?
  • どんな人にどのような影響を与えられるのか?
  • なぜそれを創りたいのか?
  • この領域を追求したいと思ったきっかけは?
  • 実現のためには、なにが真実である必要がある?
  • 実現のためには、なにが障壁になる?
  • 実現したら、ユーザーの生活はどう変わる?
  • どんな世界を創りたい?

 

ゲームプランでは、実際のアクションを想定しながら、どのようなリサーチを行うべきかを洗い出します。

 

  • だれになにを聞けばいいのか?
  • 検証にはどれくらい時間がかかるのか?
  • どのようなリスクがあるのか?
  • それぞれのリスクの深刻度はどれくらいか?

 

これらのブレーンストーミングで洗い出した内容をもとに、ビジョンとコンセプトを明確化し、具体的なユーザーリサーチの手法を固めていきます。

Moonのインキュベーションプロセスでは、ここで紹介した問題定義からビジョンの明確化、コンセプト設計を経て、ユーザーリサーチ、プロトタイピング、プロダクトローンチへと移行します。

これらは、ユーザーニーズを中心に考える手法「デザインリサーチ」を中心に設計されたビジネス創出のプロセスです。Moon Stories Blogでは、デザインリサーチとはなにか?についても詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

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